肩は、後から足せる。骨格そのものは変えられませんが、肩の見え方だけは後から変えられるし、体づくりの中ではいちばん割に合う場所でもあります。
あなたはたぶん、すでに何かをやっているはずです。ジムにも通ったし、食事にも気をつけてきた。それなのに鏡の中の自分は、去年とほとんど変わっていないように見える。
僕も同じ場所で長く止まっていました。運動の経験がゼロのまま始めて、8か月後に大会の舞台へ立つまでの間に、やり方は何度も入れ替えています。足りなかったのは努力の量ではなく、どこを先に触るかという順番でした。
肩幅を広くする前に、変わるものと変わらないものを分ける

最初に線を引いておくと、鎖骨の長さも肩の骨の位置も、大人になってからは動かせません。ここを目標に置いた時点で、どれだけ通っても届かない場所を追いかけることになります。
ただ、肩の見た目は骨だけで決まりません。その上に乗っている肉の量と形が、横幅の印象をつくっている。そして肉は負荷と回復で育つので、ここだけは後から足せます。
だから僕は、肩幅という言葉を二つに割って考えます。骨で決まる幅は持ち札として受け取り、肉で変わる幅はこれから積む。変えられない場所を諦めた人から、変えられる場所が伸びていきます。
肩の印象は、横の丸みで決まる

肩の筋肉は前と横と後ろの三方向に分かれていて、正面から見たときの横幅に効くのは、このうち横の部分です。三角筋の側部(肩の真横につく部分)と呼ばれる場所になります。
ここが育つと肩の輪郭に丸みが出て、肩の先が外へ張り出し、首から肩への線も角ばってきます。骨の幅は一ミリも動いていないのに、正面から見た印象だけが太くなる。
自分の今を知るには、力を抜いて立った正面の一枚と、真横からの一枚を撮るのがいちばん早いやり方です。鏡は無意識に姿勢を直してしまうので、他人が見ている自分とは少しずれます。
逆に前の部分ばかり育つと、肩が前へ丸まって見えて、横幅はほとんど出ません。胸を鍛える動きで前は勝手に使われるので、放っておくと前だけが厚くなりがちです。
肩幅を広くする筋トレは、種目名より角度で決まる

腕を横に上げる動きを軸に置く
僕が軸に置いているのは、腕を体の横へ上げる動きです。肘を軽く曲げたまま手のひらを下へ向けて体の真横へ持ち上げ、重さは反動を使わずに動かせるところまで落とします。
ここで多いのが、重さを追いかけてしまうことです。重くすると体が横に振れて、肩ではなく勢いで挙げることになる。軽くても狙った場所に乗っていれば、僕はそちらのほうが早いと感じています。
回数は、最後の数回がきつくなるところまで。僕は週に二回か三回、間を空けて置いています。筋肉は動かしている時ではなく、休んでいる間に育つからです。
効いているかどうかは、動かした直後に肩の真横へ手を当てて確かめています。前や首の付け根だけが張っていたら、その日のやり方は外していました。
押す動きは、前に逃げやすい
頭の上へ押し上げる動きも入れますが、これは意識しないと前の部分へ仕事が移ります。肘を体の真横に近い位置で構えると、横に残りやすくなります。
それから、鍛えるより姿勢のほうが先です。背中が丸まって肩が前へ入っていると、どれだけ鍛えても幅は出ません。胸を開いて肩を後ろへ落とす。それだけで見え方が変わることを、僕は自分の写真で確かめてきました。だから最初に見るのは、そこです。
変えられない場所を諦めた人から、変えられる場所が伸びていきます。
肩と腰の差が、体を大きく見せる

ここからは、幅そのものより比率の話です。人の目は絶対的な大きさをうまく測れず、近くにある別の線と見比べて、大きい小さいを決めています。
つまり肩は、腰との差で大きく見えます。肩を足すことと腰まわりを絞ることは、同じ目的に向かう別の道で、両方が動くと差は一気に開く。
これが、体重の数字を追っても印象が変わらない理由です。同じ体重でも、肩に乗っているか腹に乗っているかで、他人が受け取る像はまるで別物になります。体重計に乗る前に、鏡の前で正面と真横から自分を見てください。
そして体の輪郭は、顔より先に相手へ届きます。人は遠くから形を受け取って、近づいてから顔を見るので、肩の形は会話が始まる前に仕事を終えています。
服の見え方が変わるのは、体が変わったあと

服で肩幅を出す手はあります。肩に芯の入った上着、横に線が走る柄、厚みのある生地。どれも効く。ただし、効く量には天井があります。
肩に丸みがない状態でジャケットを着ると、肩の部分だけが浮いて、布が体から離れ、肩の先に角ができます。本人は着られているつもりでも、他人からは借りてきたように見えてしまう。
同じジャケットでも、肩の丸みができた途端に別の服になり、布が肩に乗ってそこから体へ落ちていきます。服が似合わなかったのではなく、服を支える台が足りていなかった。僕が装いより先に体をすすめる理由は、ここにあります。
順番を逆にした人を、僕はたくさん見てきました。先に服を買い替えて、似合わない理由が分からないまま、また別の服を買う。店で試着した時だけは良く見えるので、抜け出す合図がありません。
やっているのに変わらないなら、疑うのは努力の量ではない

進まないとき、多くの人はもっとやろうとします。回数を増やし、重さを足し、通う日を増やして、それで動くこともあれば、止まったままのこともあります。
そのときに僕が見直すのは、だいたい次の四つです。
- 狙っている場所が、肩の横ではなく前になっていないか
- 反動で挙げていて、肩に負荷が乗っていないのではないか
- 休みを取らずに、育つ時間を自分で削っていないか
- 猫背のまま鍛えて、出てきた幅を姿勢で隠していないか
どれも、やる気とは関係のない、向きの問題です。頑張っていなかったのではなく、努力する方向を間違えていただけ。500名以上を指導してきて、ここで止まっている人がいちばん多いと感じています。
肩の話は、四つの要素のうち体にあたります。三つの段階で言えば二段目、現在地を見極めたあとに、体と顔へ集中して効かせる時期の中心です。次に読むなら、同じ体の話として姿勢の項目へ進んでください。肩は、姿勢で足すことも、姿勢で消すこともできます。
